たけがみじゅんこのちょっといい話

2016.12.03

たけがみじゅんこのちょっといい話:立場が変われば

 11月の第4金曜日、そうです、話題となったブラックフライデー。本場アメリカでは命がけでショッピングをする日です。たくさん買い物をすることで経済を上向きにするという政府の後押しの施策でありながら、“ブラック”と、よくない響きが使われるのは、買い物をする人だかりで思うように歩けなかったり、交通渋滞、駐車場の停める場所がなくなるなど、ネガティブな意見からのようです。
 お店にとってはお客様が黒山の人だかりで黒字になる=ブラックとなるありがたい日ですが、良いことと良くないことは立場が変われば受けとめ方は真反対。ブラックリスト、ブラック企業・・・良くない言葉とされる“ブラック”も良い意味になるのですね。
 先日、ある官公庁の方からクレーム応対についての質問を受けました。施設内で、小さな子供連れのお母さんとすれ違った時のことです。30分ほど前にもその親子がカウンター前に座り、何かの手続きをしているのを見たので、もう帰られるのだろうと思い、すれ違いざまに、笑顔で「バイバイ」と前傾しながら、子供に手を振りました。するとお母さんは急に振り返り、「子供だと思ってばかにしないで!」と猛烈に怒り出し、そのまま帰って行ったのです。手を振った方は驚き、そのままその場に立ちすくんだそうです。「私のお子さんへの態度は良くなかったのでしょうか?」と、しんみりと聞いて来られました。
 初めて会った小さな子供へ「バイバイ」と不用意に言ったのがいけなかったのか、お母さんに最初に会釈もせずに子供だけに言ったのがまずかったのか、また、カウンターでの手続きで何かあったのか。親近感を伝えようとしたことが、相手にはそのように伝わらなかったという結果となりました。
 自分の「良し」が、相手の「良し」と同じとは限らないことは多くあります。今後一層、人間関係も複雑化していくと、ビジネスの色々な場面で選択に困ることも増えます。そんな中、大事になるのはやはり、「基本」でしょうか。今回のお子さん対応で言えば、手を振る前にあいさつをする、という基本を外さなければ怒られることもなかったのかもしれません。
 天気予報の雨予報も「お天気はグツつきそうです」と言い、「お天気は悪くなります」と言わないのは、雨を待っている農家さんなどもあるからです。自分の良いと思った考えは、それを良くないと思う意見も必ずあるということをお腹にいれた上で伝えることが求められるのでしょうね。でも、時々は自分の想いをバーンと表に出して、それが周囲に受け入れられるかどうかを試してみることも大事な気がします。独りよがりにならないためにです。

代表取締役社長 竹上順子

2016年12月