たけがみじゅんこのちょっといい話

2016.11.08

たけがみじゅんこのちょっといい話:外国人観光客

出張で赴く色々な地域で、外国人観光客にたくさん出会うようになりました。来日人数が増える分、マナーの悪さの指摘も増え、店舗や観光施設ではその対応策として、精算の仕方やお手洗いの使い方、満員時の並び方まで、何ケ国語かで書かれた上にイラストも入っているところまであります。その説明イラストを目にすることで、「マナーが悪い」と、それを知らない方々にまで公表することになっているようにも感じられます。
そんな中、こんな場面を目にしました。関西で電車に乗っていた時のこと、満席の車両に70代の女性が、あたりを見回しながら乗って来ました。席の空きはなく、昇降ドアの取っ手を持とうとした時、すぐ横に立っていた大きなトラベルバックを持った20代の韓国人男性が、席に座っていた自分の友人男性の耳元に声をかけ、おばあさんを指さし、席を代わるように言いました。友人男性は笑顔ですぐに、身体の前に置いていたトラベルバックを引いて立ち上がり、日本語で「すみません~」と笑顔で席を指し示しました。おばあさんは「いいんよ、いいんよ、あと3つ先で降りるから~」と3本の指を男性の顔の前でぶんぶん震わせ、笑顔で「大丈夫、大丈夫」と言いましたが、それでも若い男性二人は引きません。すると、今度は別の席から中国人らしき若い女性の二人組が、そこの席がだめなら、ここにどうぞとカタコトの日本語で席を立ちました。
おばあさんが乗ってきてからわずか1分の間に4名の若者、それも海外の方ばかりが席を譲ったのです。おばあさんは、また笑顔で女性二人組に「いいよ、いいよ」と断りましたが、少しためらった後、「じゃあ、ここに」と、最初の男性の指し示す席に座り、目的の駅に着くと、席を譲ってくれた男性2人と中国人女性に「ありがとう、サンキュウ」と手を振り、笑顔で降りて行きました。その後、おばあさんを見送った男性二人は、顔を見合わせひと言ふた言話しをしていましたが、大きなリアクションをするわけでもない、さらっとした振るまいは、「これってあたりまえだよね」と言っているかのように思えました。
外国人観光客の良くない行動ばかりが取り沙汰されていますが、日本人が美徳として持ってる年配者へのいたわりの気持ちは、彼らのほうが上のようです。
その人を受け入れることができかどうかを考える時に、良くないことをクローズアップしてその解決手段を練ってから動き出します。席を譲った彼らに「日本人は席を譲られるとどう思うか?」といった画策はなかったはずです。自分が良いと思えることはすぐに行い、それが相手の価値観・状況に合わなければ、そのNOを受けとめる。そういったシンプルな発想がものごとをうまく運ばせることにつながるように思えました。海外で満員電車の中、ご年配の方に声を譲れるでしょうか。よくない先入観がじゃまをして、良いものを見失わないようにしたいですね。

代表取締役社長 竹上順子

2016年11月