たけがみじゅんこのちょっといい話

2015.06.02

たけがみじゅんこのちょっといい話:同じするなら

 住民税の納税通知書を手にするこの時期、インターネットや書店ではふるさと納税の話題を耳にします。2008年から始まったこの制度、お礼に贈られる特産品を楽しみにしている方も多く、山口県岩国市では、入手困難な“幻の獺祭”がもらえるとあって、申込みが殺到したという話しも聞きました。想いをよせるふるさとへの気持ちを形にするという意味合いは、“納税”(正確には寄付)という義務に、支払う側の意志を持たせ、税制でありながら、納めること・支払うことへのマイナスの気持ちをプラスに変えてくれます。
 しなきゃいけないこと、ということを、同じするならと気持ちを切り替えて発想すると自分のみならず周りの人にもよいものを発信できるのかもしれません。
 以前に私の同僚だったA子さんは、出社直後の掃除の時に、誰もが一番面倒がっていた掃除機がけを率先してやっていました。なんせこの掃除機、業務用の大きな重いタイプのもので、倉庫から出してセットするにも一苦労。15分掃除機をかけると、朝からどっと疲れるくらいのシロモノのため、みんなが「じゃんけんで決めようか」などと言っていました。ある日、A子さんは、「今日から私が掃除機かけますから。ちょうど筋トレにもなるし、利き手でない左手を使うと、脳にもいいって聞いたんで。大丈夫っすよ」と、宣言しました。確かにA子さん、筋トレオタクで、食べ物にも気を遣っている上、「腹筋が仮面ライダー並みだったのが、最近割れなくなった・・」とぼやいていました。そのボヤキを日頃から聞いていた職場のみんなは、「じゃあ、お願いしよっか。」と渡りに船状態で、お任せすることにしたのでした。
 それから、本当に毎日、A子さんは左手で掃除機のホースを持ち、自在に重い本体を操り、職場掃除の技に磨きをかけ、床にも磨きをかけ、彼女の二の腕も引き締まっていったのでした。ですが本当は、皆がやりづらいというのを知って、誰もが納得できる理由を告げて、その仕事を引き受けてくれていたのでした。「自分のためにするんですよ」と照れ隠しで逆の言葉を言うA子さんに、職場の皆は気持ちを温かくし、逆にA子さんがしづらいことは、助け合おうね、という協力体勢になったのでした。
同じするなら気持ち良く・・・この発想は、色々な場面で、周りの人を前向きに動かす力になるのかもしれません。

代表取締役社長 竹上順子

2015年06月