たけがみじゅんこのちょっといい話

2015.03.05

たけがみじゅんこのちょっといい話:窓口の役割

飲食店、どこに行ってもサービスは良くなってきましたね。料理でも周辺情報でも、尋ねるとすぐに調べ、書かれたものを見せながら説明ができる。そんな応対が多くなりました。対面で行うサービスはその業態を問わず、本当に質を上げています。
ところが顔の見えない電話での応対は、対面で行うサービスほど向上が見られません。伝言をしても正確に伝わらない、「○○が承りました」と受話器の向こうで言っていながら伝えない。予約日時や料理の値段程度の定番情報は伝えられても、細やかなオーダーからその真意をつかみきれない。そしてその結果、訪れた日の喜びやサプライズは全くの期待外れ・・・そんなことも多くあります。
サービスのプロはお客様の会話からその日の来店目的をキャッチし、即座にキッチンと連携して料理に一工夫を加え、お客様を喜ばせたものだとか、時にはお帰りの際に小さなプレゼントとメッセージを渡して感動させたなど伝え聞いていますが、今ではそのような感動を味わう機会も少なくなり、それどころか腹の立つことが多くなってきました。これは私だけでしょうか。
お客様を交えた懇親の会での出来事です。要人たちの会食にも利用されるという有名店へひと月も前に電話で予約を入れて、出かけました。
人数は8名であること、洋食のコースを希望すること、軽い海老や蟹のアレルギーがあること、平皿は大ぶりなものを使ってサービスをして欲しいこと、テーブルサービスの担当はОさんにして欲しいこと等など予約の折には10分ほどかけて伝えたでしょうか。その都度、電話の向こうの予約の方は復唱し、明るい声で了承され、その様子からすっかり安心していました。
そしてその日、Оさんの「お待ち申し上げておりました」の晴れやかな笑顔で迎えられた私は一安心したのもつかの間、席に着いた途端、テーブルに箸が乗っているのを発見しました。洋食に箸?・・新しいスタイルかと思いつつ、ドリンクリストを受け取るとОさんは「本日はシェフの創作会席膳で承っております」と小声でささやきました。「はぁ?こちらは洋食レストランではないの?」と聞いても、Оさんはそれをほめ言葉と勘違いしたらしく、「当レストランの料理は外国の方にも好評でございまして、皆様にも是非味わっていただきたく・・・」とご満悦の様子。
違う、違います。私は洋食を注文したの….それもレストランサービスのソーサー扱いを学ぶために皿の大きさまでオーダーしたのに、それなのに全くその想いを受け取ってもらえず、私は大切な人たちとの会食ということも忘れ「あんたたちが出したい和食のアレンジを頼んでいるんじゃありません」と、いつになくキレました。
レストランも喜ばせようとし、シェフも腕によりをかけ、サービスの人も笑顔で気づかいをする。でもそれはお客様の要望がつかめてこそ活きるものでしょう。
お客様は素人なんです。想いを伝えればプロがそれを叶えてくれるだろうと思ってます。でもいくら高い能力の専門家集団であっても、気持ちを受けとめる窓口が素人であれば、その力を活かせないことは言うまでもありません。

代表取締役社長 竹上順子

2015年03月