たけがみじゅんこのちょっといい話

2014.11.06

たけがみじゅんこのちょっといい話:塩梅(あんばい)

朝夕の冷え込みがぐっと堪えるようになりましたね。やはり寒い季節は身体が温まる鍋かなぁなどと想いを馳せていた今日この頃、ある知り合いの料理長と話しをする機会がありました。 関西の有名料亭で修業を積み、二年前に店を開いた調理長は、“料理は心の有り様を表すもの”というのが口癖で、その心意気は弟子の指導でも折々に表れ“料理の修業は人間修業”、“技のみ磨かず心を磨く”の精神で、厳しい行儀作法を課しています。その調理長、一昨日はめずらしく「このごろの若いモンは、同じことを何回言ってもピリッとせん。まるで塩の入っていない出汁のようだわい」・・・・とぼやいてきました。
叱る度にこの頃の若い見習い人には「はぁ?」という顔をされ、そんな様子にまだ分からんのかとより一層言葉を重ねると、益々ぼんやりした顔をされる。その繰り返しに結局最後は根気負けし、中堅どころの二番手に教育を任せてしまうという日々が続いているらしいのです。
調理長いわく「鰹や昆布でとった出汁もそれだけではぼんやりした味なんだが、ひと振り塩を利かすとその味は見違えるようになるもんだ。わしの小言を塩に例えるなら、ちょうどいい加減で止めればよいのに、ぼんやりした顔をするから聞いていなのかとやりすぎる。塩も利かせ過ぎるときつい味になって料理をダメにするけど、わしもその口かなぁ」と、ぼやく次には自己反省をするという、いつにない展開になってしまいました。
いつも強気の調理長ですがこんな面もあるのかと感心したり、親しみやすさを感じたり、何はともあれ私としては、「料理の塩加減も教育での喝入れも、使うタイミングと量を間違えると大変なことになる」という有り難いお話を聞くことができました。 皆さんも、わかっちゃいるけどやりすぎる・・そんなことはありませんか。やられる?側の持ち味(出汁)をつかみきれず、反応が弱いからまだ足りないと思って言葉(塩)を入れすぎ、混乱させ(料理の味を損ね)てしまったという展開です。
相手の理解の具合と伝えるタイミングを踏まえて、 職場のOJTは気持ちは熱くとも言葉の激は塩梅を考えて、濃すぎず薄すぎずちょうどよい加減で効果的に行いたいものです。

代表取締役社長 竹上順子

2014年11月