たけがみじゅんこのちょっといい話

2014.08.05

たけがみじゅんこのちょっといい話:過信が生み出すもの

 あぁぁぁ暑い!暑さ対策で毎年どんどん薄着になっていくのに、容赦のない暑さはその薄くてフワフワ上着を通り越し、じわじわと身体を熱で締め上げていきます。今日も熱中症で10人近くの人が倒れたと報道がありました。
 さてそんな熱中症、ついに私もやられてしまいました。
忙しいその日、出先から出先へと移動を繰り返し、食事も水分もほとんどとらず熱されたアスファルトの上をバタバタと歩き回っていたところ、次第に頭痛で頭が重くなり、顔は赤らみ、その内身体から汗が大量に出て、ついにはフラフラと足がもつれるようになりました。でも私の場合、近くの交番で適切な対応をしてくださったので、救急搬送などという大事には至りませんでしたが、熱中症はいつでも誰でもちょっとした不注意から起きることなんだなぁと実感しました。
 さて私の身近では3年ほど前まで、いつも軽度の熱中症で倒れ、よく救急車のお世話になっている人がいました。今では彼女は別人のように元気になり、活き活きと仕事をしていますが、そんな彼女の夏の生活をみると明らかに大きな変化があります。
 以前なら朝ごはん抜き、昼はカップ麺、夜は遅くまでパソコンを打ち、晩酌と睡眠導入剤で1日を終えるという、「やってはならない社会人の不規則生活のお手本」のような人でした。ですが、3年の内に仕事に目標が生まれ、また家族も彼女の生活に深く干渉するようになり、今では外出時の塩分摂取と十分な水分補給のため、大きめのボトルを持ち歩くようになりました。
 私が熱中症になるなんて、ありえない・・・と過信して歩きまわる私と、体力のなさを自覚し食生活を整え水筒を持ち歩く彼女とでは、危機管理が全く違います。
 日常生活でもビジネス社会でもそうですが、この激変している環境の中では、今までこれでやれてきたという過信ではなく、正しく自分の状態を捉えて変化に対して対処していく力が大切なのです。私はその点、身体は既に気温や湿度の激変に対処できなくなってきているのに、気持ちは20代のイケイケの頃と同じだった、ということを大いに反省しました。
 そんな気持ちを抱きながら交番を後にする私に、お世話してくださった女性警官はどこまでも優しく、そして笑顔で「軽くてよかったですね」と言い、続けて「この頃は不正な送金の詐欺が頻発していますから、熱中症同様、気を付けてくださいね」とティッシュをくださいました。見るとそこには「広がる高齢者被害」「還付金は振り込まない」「ゆうパックで現金は送らない」と大きく三つの文字が書かれていました。
 高温多湿の街中を水分不足で歩き回った私は軽度な熱中症を発症し、確かに不注意だったかもしれませんが、「あなたも高齢者がねらわれる詐欺に気をつけなさいね」と言われると、ちょっとそこまでではありませんと強く抗議したい気持ちになりました。
 とはいえ、“熱中症も詐欺も自分には関係ない”という過信は禁物です。なぜなら、その気持ちが被害を大きくしているのですから。

代表取締役社長 竹上順子

2014年08月