たけがみじゅんこのちょっといい話

2014.07.02

たけがみじゅんこのちょっといい話:きちんと基本

 今年も青梅をリキュール漬けにしました。いつもこの時季に梅をくださるHさんは、梅酒作りの名人で、梅と一緒に簡単なレシピを付けてくださいます。Hさんは1にレシピ、2にレシピ、3、4もレシピで5に経験と言われ、丹精込めた梅の実は、Hさん流を守ることのできる私たち弟子に手渡されていきます。
 「手順通りに正確に、経験を積んだらアレンジも良しとする」というHさんの教えは、仕事の基本と同じですね。
仕事も、まだ十分にその技能を身につけていないうちは、決められた手順を守り、その時々に先輩の助言を受けて仕事を覚えます。この手順書がマニュアルで、先輩の助言が経験から培われたコツですが、近年、マニュアルぬきのコツのみ優先の声が大きくなってきました。
 コツ優先で行うと、確かに要領よく効率的に仕事を進められますが、「なぜ行うのか」という根本の理解が薄い場合、状況が変わった時に対応ができなくなってしまいます。
 また先輩の助言は、先輩が長年の経験から身に付けたコツなので、後輩の自分にも全く同じことが当てはまるとは限りません。
マニュアルを基に、「こうすると間違いのないものができる」という基礎を積み重ねてこそ、状況に応じたアレンジもできます。経験の有無を問わず、質を保ちながら仕事を行う上では、マニュアルは必要不可欠なものですね。
 ちなみに私が昨年漬けた梅は、師匠のレシピを少しアレンジし、自分のさじ加減で氷砂糖を多めに入れたために、その前の年より、梅が柔らかくなりすぎました。もう何年も漬けているので、このくらいはいいかなと思ったのですが、経験を積んだと見なされる段階には、まだなっていなかったということのようです。少しバージョンを変えたいと思った時には、「もう少し甘めの梅酒が作りたい」と相談して、やっていいことといけないことを聞いてから漬けるべきでした。ここも仕事と同じです。
 昨年の梅酒作りの、ちょっと失敗経験を踏まえ、今年は基本に戻りきちんとレシピ通りに手順を守って作ろうと思ったのでした。

代表取締役社長 竹上順子

2014年07月