たけがみじゅんこのちょっといい話

2013.11.05

たけがみじゅんこのちょっといい話:ネチネチ質問の理由

昨夜は大阪から遊びに来た友人と夕食に出かけました。女同士、「たまにはフレンチもいいわね」ということで、それなりに店を選び、先ずはロゼのスパークリングで乾杯したところで、メニューを見ながら、ふと顔を見合わせました。
 「和牛ステーキ150グラムって、産地はどこかしらね?」「前菜の冷菜三種は、どんな野菜かしら?」に始まり、「デザートのいちじくタルトは自家製とあるけど、大きさや甘さはどんな様子?」など細かくお店の人に確認する展開になってしまいました。
元々そんなにグルメでもなく、料理のこだわりが強くもない私たちですが、この頃大阪のホテルで起きた料理とメニューの“誤表示と偽装”報道に影響されてしまい、こんなネチネチ確認のオーダーになってしまったのです。きっと日本中のレストランで、同じような現象が起きているのでしょうね。
それでも「脂肪が入っていても美味しければ別に問題ないわ」とか、「賞味期限が切れたり、腐ったものを食べさせられたわけではないから私は許せるわ」などと言って寛容なところを見せつつも、料理が運ばれてきた途端、「このフォアグラは輸入?」などと聞いたりするのです。
思い起こせばこのような食に関わる偽装は、今までも度々起きてきました。赤福餅の賞味期限偽装、船場吉兆の牛肉産地偽装といった記憶に新しいものから、古くは雪印牛肉偽装、牛ミンチ偽装のミートホープなど、最終商品を手にしても判断する力の弱い私たち消費者は、ずっと欺かれてきた気がします。
この秋も国産銘柄米として売られていたミタキライスが、加工用の米の混じった偽物だという報道がありました。きっと何年も三瀧商事のミタキライスを食べてきた人たちの中には、「近頃のご飯はおかしいな」と思った人もいたでしょう。
期限、品質ともに食材として価値を持たないものを消費者に提供することは問題外ですが、偽物を用いながらもあたかも本物のように見せ、客に提供していくこともれっきとした店のルール違反だと思っています。話題の偽装疑惑のホテルレストランを利用してきた私にとっては、今回の報道によって、かつて過ごした上質な時間が一挙に薄っぺらく、そして味気ないものになってしまいました。
「このフォアグラは輸入?」「野菜ジュースの野菜は何?」というネチネチ質問は、正確な食材を精査できる舌を持たない私の、唯一防衛手段になるかもしれません。
なぜなら今回の偽装疑惑の原因は、“社内の認識違いとミステイク”らしいので、せめて客としての私ができることは、厨房とホールサービスの情報が共有できるようなネチネチ質問で働きかけ、社内の認識と顧客の認識に差が出ないように努めることと、勝手に覚悟を決めました。

代表取締役社長 竹上順子

2013年11月