たけがみじゅんこのちょっといい話

2013.10.02

たけがみじゅんこのちょっといい話:折り紙

 折り紙に、はまっています。
折り紙といっても私の場合は、包装紙のような大判な紙を折るやり方で、いただきものの綺麗な包装紙を折り始めたのが、今では紙問屋から和紙を買い入れて、身近な小物を折るまでになりました。
と言ってもこの折り紙、私は始めてからまだ半年も経っていません。決して情熱的ではないけれど嫌でもない、こんな私が折り紙を始めたのは、ある中国人雇用コーディネーターの一言からでした。
彼女は日本国内の工場で働く若い人たちを、東アジアの国々で募集し、採用をする仕事を請け負っています。
ご存じのように外国人研修生や雇用者受け入れの歴史は長く、かつての人集めを優先した頃から比べると、今は働き手の就業目的と雇用者の採用目的のマッチングに力点を置いたものに変化しています。そのため企業は採用するにあたって、就業する初期段階に手際良さを重視するのか、正確性を重視するのかによって、人の選び方を替えているのです。そしてその折、今も昔も変わらず採用されてきた試験方法のひとつが、折り紙という実技です。
以前はスライドで説明を受けた後、折り紙を渡されて折り上げるという単純な試験も、時を経て現在行われているものは、折り方図面の書かれている紙を何枚か受け取り、一定の時間内に多種類の折り紙を作るという高度なものに進化してきました。
彼女は流暢な日本語で折り紙採用の有効性を熱く語った後、私に折り紙を差し出し、「順子さんは折り紙ができますか」と聞きました。
私はもちろん折ったことがあるし、今でもキャラメルを食べると必ず包み紙で折り鶴を作るので、「東日本大震災の時にも鶴はたくさん折りましたよ」と言うと、「本当に日本人は折り鶴が上手ですよね」と笑いながら、彼女は私にカブト ムシの図面をくれました。
果敢に折り紙に挑戦すること約5分、ようやくヨレヨレのカブトムシを折り上げ、「どうでしょう?」と差し出すと、彼女はいかにも気の毒そうな表情で、「残念ですが採用先に個人的な知り合いがいない限り、順子さんを採用することは難しいです」と言いました。つまり不可です。
理由は①手順の違い、②仕上がりの不出来の2点で、彼女は「工場は結果オーライではないのよ。手順の順守が第一ですからね。それに仕上げが美しくない仕事は、お金を生みださないわ」と私の折り紙を見ながら、とても真剣に教えてくれました。
ということで不採用になった私は、無念の想いがなかなか消えず、今日もまたカッターナイフで折り紙用の紙を切っているのです。

代表取締役社長 竹上順子

2013年10月