たけがみじゅんこのちょっといい話

2013.09.02

たけがみじゅんこのちょっといい話:半分にした成果

 朝夕涼しくなってきました。ジリジリした太陽と、むせかえるような暑さから解放されるこの季節は、プチ旅行をしてみたいという気になります。
 でもこのプチ旅行、車で行くにはガソリン代が上がり過ぎますし、1人で行くにはコスト高。じゃあ公共交通機関を利用すればよいのかと思えば、利便性に問題があってこちらも断念。結局、私のような観光おひとり様は、ツアーに入るより他、秋の山や高原を効率的に楽しむ方法はないようです。
 そしてまた移動手段の中心が車という生活圏では、プチ旅行を断念する以上に近頃のガソリン価格の値上がりは生活そのものに堪えます。そんな街で暮らす私は今やレギュラー160円/Lに驚かなくなり、158円/Lという看板には、嬉々としてガソリンタンクを満タンにする、そんな生活になっています。
 来年春は消費税が上がると言われていますし、私の場合、増えない家計の可処分所得の中では、今から趣味やプチ旅行といった小さな喜びを削っていかなければならぬと覚悟をしているところです。
 とは言えビジネスの世界では、ピンチはチャンスとばかり、このようなガソリンに代表される輸入品の値上がりにも負けず、顧客層を拡大している所もあります。新幹線こだま号の停まるとある駅ビルの中に、そのケーキ屋さんはありました。
 さて皆さん、ケーキといえばどんなサイズを思い浮かべられますか。多くは7号のホールを10等分した三角垂形や、縦10cm~12cm・横5cm・高さ8cm位の長方形ではないですか。なんとその店はその長方形のデコレーションしたケーキを縦半分に切って、ステックケーキの大きさで売っていました。
 金額は一個170円から200円で、ちょっと見ると安いという印象です。でも通常の大きさの半分のサイズに切ってケーキを売っているのですから、切らないで売れば340円から400円と他のケーキ屋さんと変わりません。
 種類もメロンを使った生クリームケーキ、ショコラ、サツマイモのパイ、モンブランと様々で、高校生の多くは170円のケーキを一個だけ買い、駅の構内を歩きながら食べていましたし、持ち帰り客も1000円で6種類の違うケーキを選べるので好評のようでした。
 これは“1つのケーキでも二つに割ると半分の価格ではなく、1割増しの6割で売れる”、“今までは1個だけ買う客のいなかった店に、高校生の1個買いという今までとは違う顧客層生む”という工夫で顧客層を拡大させた良い例です。
 皆さんのビジネスはケーキのように二つに割って商売をすることはできないかもしれませんが、このケーキ屋さんの例は、大きな投資をしなくともやり方を変えるだけで商売は好転するという教えを与えてくれます。
 ガソリン価格だけではなく、様々な食料品や日用品が値上がりをすると言われている昨今、ビジネスをする側にはこのケーキ屋さんのような“ちょっとした工夫”が、ますます求められてくるのかもしれません。

代表取締役社長 竹上順子

2013年09月