たけがみじゅんこのちょっといい話

2013.04.01

たけがみじゅんこのちょっといい話:新人研修のキーワード「教育と現場の一致」

 桜吹雪の中、フレッシュなオーラを放つ新入社員の姿は、キラキラと希望にあふれています。市街地でも駅でも盛り場でも、紺のスーツ姿の新入社員は、他の年代の紺スーツ姿の先輩たちとは別なる光りを放っています。ちょうど新緑の山で、色を違えた若葉が木々の中に目立つように、この時期の新入社員の存在は、職場の中で特別な存在ですね。
 ところがこんな新入社員も、夏を迎えるころには職場の色に同化し、社外からはどの若者が新入社員なのか識別不能になっていきます。元気のない職場の中では溌剌としていた新入社員を活気のない若者へと変えてしまいますし、報告や連絡がない職場では、そのためのミス多発で若者のやる気を失わせしまいます。しかし一方、士気の高い職場では若い力の成長を促進し、会社の力へと変えていくことも事実です。
 さて、そのような意味からも新入社員研修は、意欲を持った若者を成長へ導く大変重要な教育です。更にこの時期は、既存社員にとって職場の環境と、自らの仕事の姿勢を振り返ることのできる大切な時期でもあります。
 新入社員の教育の大きな軸は、“企業理念の理解と共有”、そして“仕事に必要な基礎知識と技術の習得”ですが、中でも “企業理念の共有”は、表面的な理解にとどまる新入社員ではなく、今職場で働く既存社員にこそ、その浸透が重要だと思っています。既存社員の考え方とその行動が理念の体現ですし、その実践を通して新入社員は企業理念を、表面的な理解から具体的な理解へと深めていきます。新入社員を迎える職場では、その発揮が目的に添って行われているか否か、一度振り返りをしてみてはいかがでしょうか。
 また理念と合わせて仕事に必要な“基礎知識と技術の実践教育”では、知識や技術の習得にとどまらず、その力がどのように顧客に喜ばれ社会に浸透していくのか、その課程や基となる顧客意識を学ばせる必要があります。顧客の声と社会の要請はつながっていますので、新入社員に学ばせると同時に、既存社員も仕事の進め方の振り返りをし、若い力を受け入れる準備をしていくことが重要ですね。
 夏になる頃には初々しさで目立っていた新入社員は、そのほとんどが表面的には既存社員と同じになります。大きな声のあいさつが、控えめな小さな声になるのは3ヶ月かかりませんし、短く切りそろえた清潔な爪が、ネイルで染まり出すのは半年を過ぎるころでしょうか。
 社会に出るために必要と思い、一時的に身につけた社会性や短い期間で習った理念や実務は、現場で実践的でないのは言うまでもありません。このような一時的な理解を継続的な力に変えていくためには、教育と実践の一致が大切です。新入社員研修で言ったことと、配属先の職場でやっていることの一致を見て、初めて新入社員は安心して仕事に着手できると思うのです。

代表取締役社長 竹上順子

2013年04月