たけがみじゅんこのちょっといい話

2011.06.06

たけがみじゅんこのちょっといい話:居酒屋繁盛のポイント

私たちは毎月、サービス業の店舗でミステリーショッパーと言われる、サービス状況調査を行っています。今月は居酒屋チェーンの調査でした。
 「歓送迎会や職場の飲み会で競合するのは、この頃は居酒屋なんですよ。何しろあちらは安いですからね」と、そんな話を飲食業の方からさんざん聞かされている私は、「居酒屋の強みは安さ」だけなのか、そのような真相を今回の旅で究明しようと、鼻息荒く、調査に出たのでした。
 かつて居酒屋はサラリーマンの憩いの場として登場し、全国的に広がり、地方の赤のれん一杯呑み屋の営業を崩壊させました。また、凝った内外装とヘルシー料理、女心をくすぐる一口サイズデザートといった多彩なメニューの展開で、その顧客層は男性サラリーマンに留まらず、女性ファンを獲得し、その上、「ネタ良し、活気あり、低価格」といった3要素で、学生層や主婦層をも取り込んできました。もはや日本中、どの街に行っても居酒屋は、繁華街の入り口にでかい看板を掲げ、でかい存在感で鎮座しています。
私は今回、関西の大きくふたつのタイプの居酒屋チェーンの調査を担当しました。
まず夜7時、1店舗目に到着。ビールと刺身を注文し、あれこれ調査をします。次は8時半に別な街の店で、壁に貼ってあるポップを見ながら、次々に料理や酒を注文し、推奨品が品切れを起こしていないかをチェックをします。更にほろ酔い気分で3店目に到着し、「後30分でオーダーストップですが」と迷惑げに言う従業員に、笑顔で焼き鳥を注文し、その従業員の立ち振る舞いや、料理が出るまでの時間を計りながら、メモをとるという何ともハードな繰り返しを毎夜行っていました。
そしてこんなお腹に厳しい調査を繰り返した結果、居酒屋の強みは次の3つに集約することに気づいたのです。
繁盛する居酒屋は「新鮮・工夫・自分で決める楽しみがあり、中でも自分で選ぶ楽しみが提供できる店は大繁盛している」です。
かつて私は居酒屋で“富山の白えび酢味噌和え・380円”を発見した時、こんな所に白えびが安値である!と感動し、注文ました。この注文動機は「こんな所に」だったのですが、これが料亭だったらどうでしょう。「富山の白えび酢味噌和えでございます」と出された時、居酒屋ほどの新鮮な驚きがあるのでしょうか。料亭だったら何も言わなくても、旬な食材で凝った料理を出すのは当たり前、私は少なくともそう思っていますし、その想いをくんで料亭や旅館料理は、相手の会食目的に合わせた期待以上の料理と雰囲気を、提供しなければなりません。
何も言わなくても満足させるだけの腕があるのが、料亭や旅館料理の強みでしょう。しかしそんな期待に応えきれない名店の一部は、おいしさや新鮮さを自分で選べる楽しさを強みにした繁盛居酒屋に、おされ気味になってきているのではないのでしょうか。選べる楽しみが多い店、お客様に主軸を置いた店、これが大前提の要因でした。

代表取締役社長 竹上順子

2011年06月