たけがみじゅんこのちょっといい話

2010.12.01

たけがみじゅんこのちょっといい話:自分たちの店

季節はいつのまにか、街中が光の芸術に飾られるクリスマスの時期になりました。
年々LEDライトが増えてきたせいか、街は「赤・青・緑」から「白・青」の大人っぽい光に変わってしまいましたが、光に照らされて歩いていると、何となく幸せな気持ちになるから不思議なものです。
さて、そんな晴れやかで慌しい今年最後の月、商売もクリスマスまでが1つの山を向かえます。特にレストラン、居酒屋、お食事処といった飲食店は毎晩、大忙しなのではないのでしょうか。今月はそんな大忙しの飲食店の中で、勝ち残っていくであろう、そんな店舗の要素をちょっとだけ紹介してみたいと思います。
飲食店の場合、来店されたお客様にお料理で満足いただくことはもちろんですが、お越しいただいたお客様がお店を出られた後、どんな行動をとられるのか・・そこまで考えたサービス全体の組み立てをしなければなりません。例えば常連の山田さん、職場の親睦会なので予算は飲み物込みで、4,000円でお願い・・こんな予約が入ったら、お店と従業員は次のように考えます。30代の山田さんの年齢を考えるとボリュームが必要、でも上司は接待慣れをされている可能性もあるので料理の中の一品は特製品を作る。女性もいるためデザートはフルーツを添えて・・と、こんな風に作り手とサービスを提供する側が連携し、特製品を出す時のコメントはどんなひと言が最も効果的か、など作り手とサービス提供者で一緒に考えていることも繁盛店の特徴です。また今回の4,000円のお客様が、次のまた来ていただく為に、今回はどんな雰囲気を演出しなければならないか、といったことを考えることも必要でしょう。
こんな連携がとれている店ですから、お料理と雰囲気に満足したお客様は、会計の頃には、次は誰とこようかと想い始めます。この「次は誰とこようかな」と思わせる為の、料理・雰囲気・サービスを作り出せる従業員が何人いるかが、店が繁盛店になれるかどうかの境目です。みなさんがよく行くお店はいかがですか? こんな気配りをお店から感じられるので何度も色んな人たちを誘って行きたくなるのではないですか。
このような「料理・雰囲気・気配りサービス」を飲食店の3原則と言います。この3原則をオーナーが中心になって取り仕切る所もありますが、大型店や多店舗展開をしている所などでは、最前線を任せられた従業員同士が連携し、工夫しながら行うことができるようにならないと、繁栄はしていきません。
私は最近、知人と“あまり評判の良くないレストラン”へ出かけました。とにかく世間の噂ではレストランなのに“料理がまずい”とのことで、そこに行った事のない人まで、「あの店は料理が今ひとつだってね」と言う始末です。どんな具合なのかと行ってみると、やはり3原則はひどいものでした。特に雰囲気が良くなく、料理までをも品質を落としているような印象を持たせるのでした。だだっ広いレストランの中には “季節感”がなく、料理に工夫はあるものの、チョコレートタワーなどという目を引くデザートは隅っこに追いやり、まるで団体旅行の朝食会場を思い起こさせる有様でした。
料理は五感で楽しむと言います。折角の料理ですから、サービスする担当者が短い言葉でひと言アピールするとか、従業員同士が相談して店内のディスプレイやレイアウトを考えるなど、こんな取り組みを行うだけで、最前線でサービスするメンバーの意識も上がり、それに伴ってお客様の満足感も上がるのですが・・残念ながら、そのレストランは自分たちのお店だという意識の薄い店でした。お客様と接する最前線の人たちが、「自分たちの店」という意識を持って、お客様に接することができるように教育していくこと。それも繁盛店として大切な要素だと思います。

代表取締役社長 竹上順子

2010年12月