たけがみじゅんこのちょっといい話

2010.05.01

たけがみじゅんこのちょっといい話:日本式ホスピタリティ 

1日に開幕した上海万博の出足は、当初見込みの半分にも満たないらしいですね。でも、2005年に愛知県で行われた“愛・地球博”も、確か当初は出足が振るわず心配されましたが、結果は目標700万人以上も上回る2200万人の来場者数で、大成功を収めました。今回の上海万博も何度も通える通行手形のようなパスポートが発売されたと聞いていますから、きっと愛知のような賑わいを見せるに違いありません。
ところで上海には近年、私の仕事先の多くの企業がどんどん進出しています。中にはこの度の上海万博に出展している先もあり、私も1年半の間に2回往復しました。
「いらっしゃいませ」と笑顔で言い、「ありがとうございました」と感謝のお辞儀をする日本式接客は、“愛想無し”が当たり前の中国でも、なかなかの人気で、現地指導員が気合を入れて接遇訓練をしています。何しろ周りの店では、あいさつしてくれないのは当たり前で、私自身も店で商品を触って見ていたら、触るな!と怒られたり、3つ星クラスのホテルのドアボーイでさえ、お客様を乗せた後、車のドアを片手でボーンと投げるように閉めるなど、思い出したらきりがないほど、失礼を体験しました。一番丁寧だったと感心したのは、中国共産党の歴史ミュージアムに行ったときくらいでしたか・・・
ともあれ、サービス提供者に対し、すこぶる接客姿勢にうるさくなってきた日本人から見ると、無愛想で失礼だらけの中国でしたが、商業系の日本企業の進出で、これからは少しずつ変化をしていくのかもしれません。電気や車の技術の輸出だけでなく、接遇も輸出されているのですね。そのうち日本人より、おもてなしの心を表現することができる中国の方をこの街に迎え、サービス産業もビジネスをしていく時代が、すぐそこにあるような気もします。
一方日本人は、何年か前と比較すると、めっきり接遇力が低下しました。特にアルバイトやパート社員の方がビジネス最前線の中心となってきてから、その傾向はいっそう高まり、人と人との暖かいやりとりが仕事の中に表現されなくなってきました。1年間に4000人のアルバイトを採用しても、その内20名しか残らないといった現状では、お客様の期待に応えられる接遇力を教育するには時間切れ・・・という状況なのかもしれません。(この数字は私の仕事先の会社の例です) やはり商店街のようにお客様の顔と好みを良く知った販売員さんがいて、あれこれ世話を焼いてくれるような暖かさは、アルバイトさん自身も体験したことがないから、難しいのでしょうね。
そういえば先日、財閥系企業の企画部長が「この頃の20代のほとんどは店に行っても、あいさつしてもらわなくても気にならないし、して欲しくないそうだ」とおっしゃり、私と激論になりましたが、決してそのようなことはないと思っています。20代も20代でなくても、気持ちの良いあいさつは良い気分にさせるのです。良い気分にならないとビジネスは進みません。中国の方たちも少しずつ良い気持ちにさせると、よく売れるということに気づきだし、私たちは近い将来、その分野でも負けてしまう可能性があります。みんな、頑張らなければなりません。頑張ってニッコリ笑ってあいさつして、向き合う相手を良い気持ちにさせていきましょう。

代表取締役社長 竹上順子        

2010年05月