たけがみじゅんこのちょっといい話

2009.07.13

たけがみじゅんこのちょっといい話:たらい回し

“たらい回し”と聞いて、皆さんはどんな事を想像されるのでしょうか。
“たらい回し”は、本来、足芸の一つで、 明治、大正時代にかけて流行し、鉄割熊蔵という大家も存在したと伝え聞きます。しかし、時代は今や平成、“たらい回し”と聞いて、「あぁ、鉄割一座の足芸ね。この間ヘルスランドで見たわ!」なんて事を言う人は、ほとんどいないと思います。
この頃の私たちの“たらい回し”の解釈は、①お客様意識の薄い従業員が、お客様の意向を十分に把握しないまま、上司や他の部署に回してしまうこと ②お客様と対応した従業員が、面倒な事を避けるため、他部署へ押し付けながら責任逃れや責任転嫁をすること・・・の2つではないのでしょうか。
以前だと“たらい回し”と言えば、それに続く言葉が“お役所”と言われたぐらい、役所の職員の仕事に対する例えが多かったようですが、近頃は役所の仕事、特に住民と接する窓口職員の応対は、民間の小売店よりずっと親切で適切なものに変わってきたように思います。
では、小売店はいかがでしょうか。以前はお客様の顔や好みの傾向をしっかりとつかみ、その信頼関係で商売をしてきた業界が、今や、伝言を店長や上司に頼んでも伝えてもらえず、商品やサービスに関して不明瞭な事が生じると、言ったの言わないのとお客様に向って抗議する。更にひどい人になると、説明に対し異論を唱えた途端、逆ギレしてお客様を驚かすなど、一体全体かつて商売人の心得であった、「お客様のことを考えて商売をする」とした、あの商いの心はどこに行ってしまったのでしょう。
そこでそれとなくサービスのバラツキについて従業員に聞いてみると、頼りなさそうな従業員が口にするのは「私は派遣ですから」とか「私は半日のアルバイトですので」という言葉。キリっとした正社員のような人に聞くと「マニュアルがありますから、守ってもらえば・・」などとおっしゃる。これって、あのまさに責任逃れの“たらい回し”じゃないかしら・・・・。確かに職場には正社員、契約社員、パート社員、派遣社員などと異なる身分制度(?)もあり、それによって処遇も異なりますが、それをそっくりそのままお客様に回されても困ってしまうのですよ。まぁ分かりきったことですが、実際こんな事が多く起きています。
あとこの頃、新たな“たらい回し”スタイルが誕生しました。私の例で恐縮ですが、購入したパソコンの不具合を解決しようとコールセンターに電話をした時、次々に違う連絡先を教えられ、行き着いたフリーダイヤルでは「ただ今、電話が混み合っておりますので、そのままお待ちください♪♪♪♪(音楽)♪♪・・もし、お電話をお切りになった場合、順番が後回しになりますので、お切りにならないでお待ちください♪♪(音楽)♪♪」で、長々待たされ、もうすぐ出ますよという直前のツーツーというコール音がなるや否や「この電話はサービスの品質向上のために録音させていただいております」と、かけ手を緊張させるひと言が入る。これもやはりITの進展がもたらした“たらい回し”だと思う反面、一度に広範囲の人たちに対応しなければならない場合は、しかたのないことなのかしらと憂いてみたり、複雑なところです。コールセンターの例では、せめて最初に電話をとって要望を聞いてくれたオペレーターさんが、的確で親切な案内をしてくれることを、ささやかですが望んでおります。

代表取締役社長 竹上順子

2009年07月