たけがみじゅんこのちょっといい話

2009.03.01

たけがみじゅんこのちょっといい話:時代と共に変わるもの、変わらないもの

3月に入ると、みるみる春の兆しが濃くなってきました。日本は古くから、変わる季節ごとに楽しめる習わしや、食材の楽しみ方など、風情を感じさせるものが多いですね。
3月といえば、おひな祭り、そして彼岸、卒業式もこの時期ですね。時代の流れと共に変化していくもの、変化しないもの、季節を彩るお祭りごとも、その中の一つです。
例えばお雛飾りの内裏様(だいりさま)の座る場所。私のお雛様は向かって左側にお内裏様を飾っていましたが、本来日本式では「上座を左側」としています。
であればお内裏様も左側に座り、お雛様を見る側からすると、向かって右側にあるはずですが、一部の古代雛を除き、ほとんどのお雛様は西洋式の「上座の右側」に座っています。つまり、お雛様を見る側からすると左に内裏様がいるという置き方です。皆様の家のお雛飾りはいかがでしょうか。
また日本式の「左が上座」とする考え方は、天皇が南に向いて立った時に日が昇る方向、つまり左を上座、日没方向を下座とした考え方から由来しています。お雛飾りのお内裏様の座る位置が日本式でいう下座に変わったのは、大正天皇からだと言われ、西洋の「右を上座とする」という考えに習い、大正天皇が即位式に右に立ったことから派生しています。私たちがよく言う「私の右に出る者はいない」という例えも、自分より優れた者は右側にはいないという意味で、これは西洋式の例えと言えるのです。
時代と共に変化していくこと、変化しないこと、様々ですね。変化しない昔からの身近な行事にお彼岸があります。お彼岸は春と秋とで年2回。お先祖様に礼をつくし、春にはこし餡の「ぼたもち」をお供えし、秋には粒餡の「おはぎ」をお供えします。春の餅がこし餡を使うのは、冬を越した小豆は皮が硬いためですが、今は好みも様々で、春秋通じ、つぶ餡のあんこ餅という場合もあるようです。
しかし同じあんこ餅でも、春は牡丹の花に似せて作り「ぼたもち」とし、秋には萩の花に似せて作り「おはぎ」という粋な計らいですね。
私たちの身近な行事の中にもこんな素敵な計らいがたくさんあります。時代を経て変化していくこと、人々の趣向によって変化したこと、季節の変化を楽しみながら、そんな例えや習わしを柔軟に受け止め、先人が大切にしてきたことを守っていきたいと思います。
さて、ここで今月の問題です。応接室などでお客様をおもてなしする際に出すお茶ですが、お茶の入った茶碗は茶たくの上に置きますね。この茶たくの木目は茶碗を置く際、縦の木目を正面とするのでしょうか。横の木目を正面とするのでしょうか。また年輪がある場合はどのように置いたらよいのでしょうか。正解は来月までのお楽しみです。

代表取締役社長 竹上順子

2009年03月